「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見を提出しました。
2019.10.07(No.10000954)
公正取引委員会より「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」に対する意見募集がなされ、9月30日に意見を提出しました。

(該当箇所)
1.優越的地位の濫用規制についての基本的考え方
(意見内容)
 デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引を、独占禁止法による優越的地位の濫用規制の対象とすることに賛成します。
(理由)
 デジタル・プラットフォーマーが提供するサービスは多様化しています。消費者はその検索サービスやオンライン・ショッピング、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、デジタル・プラットフォームを日常的に利活用しています。
 一方で、多くの消費者がトラブルに巻き込まれています。消費者・事業者間には情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在(消費者契約法第1条)する中、デジタル・プラットフォーマーに対する規制は後追いになっているのが現状です。
 デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引を積極的に優越的地位の濫用規制の対象とすることは、デジタル・プラットフォーマーと消費者の間の取引における消費者保護の環境整備、公正な取引市場の実現に資するものと考えます。


(該当箇所)
5.優越的地位の濫用となる行為類型
(1)個人情報等の不当な取得
(2)個人情報等の不当な利用
(意見内容)
 デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引において、考え方(案)に示す行為が優越的地位の濫用に該当すると捉えることに賛成します。
(理由)
 公正取引委員会が行ったデジタル・プラットフォーム・サービスの利用者(消費者)アンケート(2019年3月)によれば、「個人情報や利用データの取扱いや情報管理に懸念を感じる」との回答は85.6%、また、具体的に「不利益を受けたと感じたことがある」と15.1%の人が回答しています。
 プラットフォーム利用契約の前提条件として、消費者は自分の個人情報について指示されるままに入力をし、多項目、詳細な利用規約への同意を迫られています。しかし、その後のプラットフォームの利用に伴い、自分のどのような利用情報が収集・利用されているのかについては明らかではなく、理解できていないことがほとんどです。
 考え方(案)に示す行為を独占禁止法上の優越的地位の濫用と捉えることにより、デジタル・プラットフォーマーの消費者対応・セキュリティ対応の強化や意識改善につなげるべきと考えます。


(該当箇所)
その他
(意見内容)
 デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引を含む、消費者契約に関する独占禁止法違反行為の是正に関して、適格消費者団体の意見を反映する制度を創設するべきです。方法としては、事業者の独禁法違反行為に対する適格消費者団体の差止請求権の付与も一選択肢として考えられます。
(理由)
 優越的地位の濫用を含め,「不公正な取引方法」の中には,抱き合わせ販売(一般指定10号)や欺まん的顧客誘引(同8号)等,事業者と消費者間取引に関係するものが存在します。独占禁止法上差止請求の制度(25条)はあるものの、被害を受けた個々の消費者が差止請求を行うことは現実には極めて困難です。
 現行法上,適格消費者団体は景品表示法上の優良誤認と有利誤認については差止請求権を付与されており、表示広告の是正について大きな成果を上げています。しかしながら、その他の独禁法違反行為については、消費者団体が事業者に是正を求めるための制度的な担保が存在しません。
 消費者団体は、消費生活に関する意見の表明、消費者の被害の防止及び救済のための活動を期待されており(消費者基本法8条)、とりわけ適格消費者団体は、不特定多数の消費者利益の実現のため、差止請求権を行使する適格性を有するとの認定を受けた団体です(消費者契約法2条4項)。
 デジタル・プラットフォーマーをはじめとする大企業と消費者間取引の公正のために貴委員会の活動が重要であることはいうまでもありませんが、市場の公正を実現するためのプレーヤーとして消費者団体の意見を適切に反映する制度の創設が必要であると考えます。