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6月24日(土)エル・おおさか南館5階 南ホールにて、2023年度消費者支援機構関西(KC’s)の通常総会と記念シンポジウムを開催しました。今年度は、会場とWeb会議システムを併用して開催しました。
当日は「実出席」、「書面出席」、「委任出席」をあわせ、表決権総数111に対して105の表決権のもとで議事を行いました。
通常総会には、実出席、Web出席を合わせ、90名近い参加があり、全体司会を岡本孝子理事が務めました。冒頭、藤井克裕理事長から開会の挨拶があり、最近の消費者被害や消費者問題における今日的な課題、当団体の訴訟の活動などについて述べました。
●2023年度通常総会
総会の議長に個人正会員の大上修一郎さんが選任されました。議事録署名人は団体正会員の増田尚さん、及び藤井克裕理事長のお二人が選任されました。
総会議案提案は、小林紀久子理事兼事務局長より第1号議案(2022年度事業報告承認の件)、第2号議案(2022年度決算承認の件)、第3号議案(役員選任の件)、第4号議案(定款変更の件)を提案し、2023年度事業計画、2023年度活動予算を報告しました。
続いて、藪野恒明調査実施者より消費者契約法第31条に基づく調査報告がありました。これを受け、採決に移り、全議案が可決されました。
その後、片山登志子副理事長より、臨時理事会で選出された新役員体制の紹介がありました。新たに理事長として西島秀向さん、監事としては藪野恒明さんが就任しました。また、2019年度より4年間理事長を務めていただきました藤井克裕さんが今期をもって退任されました。
●総会記念シンポジウム「フォーシーズ差止請求裁判の意義をくらしから考える」
通常総会終了後、総会シンポジウム開催にあたり、片山副理事長より、開催趣旨とともに、
当団体の初めての被害回復訴訟の取組や、この間の消費者契約法等の改正を受けて、さらなる消費者被害情報の提供のお願いなどについて述べられました。
片山副理事長のご挨拶の後に、最高裁にて2022年12月に逆転勝訴で結審したフォーシーズ差止請求裁判について、弁護団の増田尚弁護士より報告がありました。KC’sで長年にわたり取り組んできた家賃保証会社の中で2016年に行ったフォーシーズ株式会社に対する訴訟の大阪地裁、大阪高裁、最高裁のそれぞれの判断についての詳しい説明が行われた後に、坂東俊矢常任理事、堀泰夫司法書士のお二方を交えての四つの点からパネルディスカッションが行われました。
コーディネーター 坂東 俊矢KC’s常任理事
パネリスト フォーシーズ訴訟弁護団
増田 尚 弁護士
パネリスト 全国追い出し屋対策会議事務局長
堀 泰夫 司法書士
(1)最高裁令和4年判決を理解するために必要な背景
坂東さんからは家賃保証会社の「追い出し屋」として問題化していることへの規制、家賃滞納に伴う賃貸人と賃借人との信頼関係破壊の法理、保証人の責任と家賃保証会社の実際などについて質問されました。
増田さんからは「追い出し屋規制法案」が国会に提出されたものの廃案になり、「住宅セーフティーネット法」が改正されたが、法規制としては弱いこと、相互の信頼関係による契約であることから1回の家賃滞納によって解除されるものではないといった考え方が信頼関係破壊の法理であると述べられました。
また堀さんは増田さんとの活動の中で、近年の家賃保証業増加の主な要因として高齢化や住宅の老朽化、さらに非正規労働者の増加があり、ほとんどの賃貸住宅で保証会社が付けられていることの説明がありました。
さらに回答を受けて坂東さんは、個人保証から機関保証に移行することの必要性はありつつも、柔軟な対応がされなくなることへの懸念を述べられました。
(2)家賃保証会社に関する消費者(賃借人)からの苦情と対応
坂東さんは家賃保証会社によって賃借人はどのようなトラブルに巻き込まれているのかについての質問がありました。
堀さんは昼夜と問わず督促されることや鍵穴の封鎖、家財道具の処分が行われていることや、相談者が弱い立場にある状況などを説明されました。
増田さんからはこれに加えて現状回復費を巡る求償の範囲の問題、保証会社に加えて個人保証人まで要求される例が紹介されました。
(3)差止裁判での法律的論点と最高裁判決の意義
坂東さんからは高裁での敗訴判決と最高裁の勝訴判決の違い、契約条項に基づいた事業者側の主張と賃借人保護の実情について質問されました。
増田さんからは差止請求における限定解釈や自力救済を安易に認めた高裁判決に対し、弁護団より上告受理申立理由を提出し、結果的にこれらを否定する最高裁判決が出されたことについて説明がありました。
堀さんからは業者自身が利益追求を進めるあまり実質、賃借人保護が形骸化していることについて述べられました。
そして藤井前理事長からは理事就任時から本日の理事長退任までフォーシーズ差止請求にずっと取り組んで来たことや消費者団体が事業者の不法を止める役割としての想いを語っていただきました。
(4)最高裁判決から学ぶこと
締めくくりとして、増田さん・堀さん共に、今後の貧困層や高齢者の居住権の保障、保証拒否・入居拒否問題について行政側の支援や、立法の必要性について述べていただきました。
シンポジウム終了後は飯田秀男副理事長による閉会の挨拶が行われました。