MENU
第2 申入れの概要
1 不適切な広告内容の是正 融資広告において,既存債務の借換えに際し,あたかも消費者が,利息制限法に反するグレーゾーン金利を支払わねばならないかのような誤解を与える広告を中止し,さらに,融資広告において,既存の借入債務について,超過利息については支払義務がないことを明示すること。
当初の両行の勧誘広告では,明らかに利息制限法の上限金利を超える,22%~29.2%といった高金利での借入れを借換シミュレーションの比較に使用し, 消費者に対して,このような高金利の支払を継続するよりも,おまとめローンで債務を一本化することが有利であるいう宣伝をしていました。
しかし,最高裁判所の判例でも明らかなように,そもそも「グレーゾーン金利」=「超過金利」を支払う必要がありません。すなわち,法律上支払義務がないわけです。
したがって,このように支払義務がない債務の借換を勧誘しようとする文言やシミュレーションを含んだ広告は,極めて不当な広告ですので,上記の改善申し入れを行いました。
2 利息制限法による引直し計算の説明責任の明確化 債 務者に対して,既存の借入については,利息制限法に基づく再計算により適正な債務額を算出させるなどして,利息制限法による多重債務の救済の機会を確保す る。あるいは,少なくとも既存の借入について利息制限法に基づく再計算をすれば,債務が減少したり,消滅したりすることを,債務者において十分理解できる ように明確に説明すること。
消費者は,利息制限法による引直し計算により,従前の高金利での借入金を減額させ,場合によっては,払い過ぎた金利(これを「過払金」といいます)の返還を求める権利ないし機会を有しています。
ところが,その再計算にあたっては,早急に専門家のアドバイスを受けることが必要なのですが,安易におまとめローンを利用すると,超過金利を含む金額の ままで借入金が一本化されてしまいますので,その結果,消費者が利息制限法によって多重債務から救済される機会が事実上失われてしまうのです。
そもそも,銀行には利用者たる消費者の財産を保護する責任があるにもかかわらず,おまとめローンの利用で,逆に消費者に損害を生じさせる結果となってしまうことは,決して放置すべきではありません。
そこで,おまとめローンの手続きにおいては,利息制限法による適正な債務額の算出に関する説明やアドバイスを求めることにしました。
3 厳しい与信審査による融資判断の要請 おまとめローンとして融資を行うにあたっては,一般的な与信審査ではなく,債務者の返済能力をより一層厳格に判断する与信審査を行うこと。
おまとめローンの利用を検討している消費者は,多かれ少なかれ,その大半が多重債務に陥っていると考えられます。このような消費者は,早期に専門家のアドバイスを受けるべきであり,おまとめローンの融資では,抜本的な解決ができないことが多いと思われます。
すなわち,おまとめローン自体も,利息制限法の範囲内とはいえ,高い金利負担(概ね9%~15%)が必要となることから,多重債務者の救済とならないこ とが多く,むしろ,それまでの遅延損害金や,将来の利息をつけないことを原則とする弁護士等の専門家による債務整理により解決を図るのが望ましいのです。
したがって,融資審査にあたっても,そのような多重債務の現状を十分に反映した,厳格な与信審査が求められるべきであり,そのような審査の結果,融資困 難な消費者には,多重債務に関する相談窓口を案内するなどして,その救済の道筋をアドバイスするのが,真の利用者保護に根ざした銀行の在り方と考えます。
4 不動産担保や保証人取得の禁止(この項目は関西アーバン銀行のみ) おまとめローンの融資に際しては,債務者本人やその親族等の居住用不動産を担保に入れさせたり,あるいは,保証人を要求してはならないこと。
おまとめローンの融資に際して,居住用不動産を担保として取得したり,新たに保証人を要求したりすることは,決して認められるべきではありません。
なぜなら,前述のとおり,おまとめローンは,多重債務の抜本的な解決になりえない以上,近い将来,おまとめローンの返済自体も行き詰る可能性が高いからです。
その結果,大切な自宅を失ったり,あるいは親族・知人などの保証人に多大な迷惑をかけたり,取り返しのつかない損害を消費者に与えることになりかねないのです。
以上で,申入れの概要を説明しましたが,詳しくは,関連記事10000007「お問い合わせ」「申入書」をご参照ください。
第3 両行との交渉経過
以上のようなKC’sからの要望に対して,関西アーバン銀行と東京スター銀行の対応は以下のようなものでした。
関西アーバン銀行 東京スター銀行
5月 9日:毎日新聞広告。 資料A 5月 5日:毎日新聞広告。 資料D
7月31日:「お問い合わせ」を送付。 9月29日:「お問い合わせ」を送付。
8月21日:書面回答受領。 11月 7日:来訪、面談。
8月28日:来訪、面談。 11月13日:書面回答受領。
10月11日:毎日新聞広告。 資料B 11月21日:朝日新聞広告。 資料E
12月 1日:「申入書」発送。 12月 1日:「申入書」発送。
12月27日:書面回答受領。 資料G ?
1月29日:朝日新聞広告。 資料C 2月14日:朝日新聞広告。 資料F
4月26日:書面受領。 資料H
1 関西アーバン銀行
関西アーバン銀行とは,面談による意見交換に加えて,「お問い合わせ」「申入書」に対して,ともに書面による回答がありました。
関西アーバン銀行側は,おまとめローンは「消費者ローンの健全化に資するもの」などと反論しておりましたが,他方で,新聞広告やチラシには「現在のお借 入れ金利が利息制限法の上限を上回る場合は,個々の契約によっては上回る部分の支払い利息が,返還されるケースがありますので,法律専門家へのご相談をお すすめします」との注意喚起の文言を挿入し,また,申込者に対する説明時にも専用の説明書を用意し,より踏み込んだ説明をする,との回答でした。
4月5日 新規契約者にお渡ししている「説明文書」を2007年1月31日以前の契約者に4月6日から順次送付する旨の連絡を受けました。
2 東京スター銀行
東京スター銀行とは,面談による意見交換は行いましたが,その後,「お問い合わせ」に対して,書面で回答をいただきましたが,「申入書」に対しては,現在に至るまで回答がありません。
その後,新聞広告等の勧誘表現を関西アーバン銀行と同旨の変更をしたようですが,申込者に対する説明時にも専用の説明書を用意し,より踏み込んだ説明を する,ということは聞いておりません。いずれにしても私どもに対する回答や説明はなされないままとなっています。
2007年4月末に、すでに広告・ホームページの表現を変更しており、申込書に過払い金に関する説明書を同封し、説明するようにしているとの4月26日付けの文書を受取りました。
第4 最後に おまとめローンを取り扱っている金融機関は,上記2行にとどまりません。インターネットなどでは,おまとめローンというカテゴリーで多数の金融機関の広告を目にすることができます。
しかし,私どもは,現状のような勧誘方法・融資形態にとどまる限り,おまとめローンは,消費者の多重債務という弱みに付け込んだ不当商品といわざるを得ないと考えています。
最近になって,金融庁をはじめとして,おまとめローンの問題点を指摘する報道が目に付くようになり,ようやく私どもが訴え続けていたおまとめローンの不当 性が理解されつつあるようにも感じますが,今後とも引き続き,消費者の立場から,おまとめローンの実態を監視してまいります。
「お問い合わせ」「申入書」は関連記事10000007をご覧下さい