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KC’sが、大阪府堺市に本社のある貸衣装会社(株)レンタルブティックひろ(屋号ヒロウェディングコスチューム・以下、「同社」といいます)」を被告として、同社が使用する貸衣装契約の中途解約時における違約金(取消料)を消費者に負担させる契約条項(「解約金条項」といいます)が、不当に高額な違約金を消費者に負担させるものであり消費者契約法に違反するとして、当該解約金条項の使用差し止め等を求めていた消費者団体訴訟(2013年9月12日提訴・大阪地方裁判所堺支部)において、以下の概要の裁判上の和解が2015年3月16日に成立し、訴訟が終了しましたので、公表いたします。
【和解の概要】
①被告は、2015年4月1日以後、消費者との間で貸衣装契約(被告の提携事業者を経由したものと
含む)を締結するに当たって、この裁判で使用の差し止めを求められていた解約金条項を内容とする
契約を締結しないこと。
②被告は、2015年4月1日以後、使用の差し止めを求められていた解約金条項を変更(改訂)する
こと。
③被告は、2015年4月1日限り、②による変更前の解約金条項が記載されている契約書用紙を廃棄
し、同日以後、これを使用しないこと。
④被告は、2015年3月23日までに、被告の従業員に対して、以下の事項を周知させること。
(ⅰ)2015年4月1日限り解約金条項を変更(改訂)すること。
(ⅱ)変更前の解約金条項が記載された契約書用紙を2015年4月1日以後は使用しないこと。
(ⅲ)変更前の解約金条項が記載された契約書用紙を2015年4月1日限り、速やかに廃棄すること。
⑤被告が、上記①と異なり、変更前の条項を内容とする契約を締結した場合には、当該契約の当事者と
なった消費者1人あたり、金10万円を原告に支払うこと。
⑥被告が、上記②と異なり、2015年4月1日限り、解約金条項を変更(改訂)しなかった場合には、
同年4月2日以後、変更を行うまで、1日あたり、金10万円を原告に支払うこと。
⑦被告が、上記③と異なり、2015年4月1日限り、変更前の解約金条項が記載された契約書用紙の
廃棄をしなかった場合には、同年4月2日以後、廃棄するまで、1日あたり、金10万円を原告に支
払うこと。
⑧被告は、原告に対して、今後も消費者から貸衣装契約に関して苦情や相談等があった場合には、その
解決に向け、真摯に対応することを約束すること。
【和解に対する評価(コメント)】
1 本件訴訟の目的は,被告の貸衣装契約における中途解約時における違約金(取消料)を消費者に負担させる条項(詳細は、別紙1「契約条項(変更前)」のとおり。以下「変更前条項」といいます。)が、消費者に対して過大な違約金を負担させるもので、消費者契約法第9条1号に違反するものとして、その使用の差し止めと変更前条項の是正を求めることにありました。
2 変更前条項の②は、中途解約日が衣装の使用日よりどれだけ以前であるか否かを問わず、契約締結日から8日目以降、使用日の30日前の時点における中途解約の場合には、一律に、契約代金の30%の金額を取消料として消費者から徴収するという内容でした。
変更前条項によると、消費者が使用日の1年以上前に貸衣装契約を締結して、その8日後に中途解約をする場合、中途解約時から使用日まで、まだ1年近くの長い期間があるにもかかわらず、消費者は使用もしない貸衣装代の30%もの高額の取消料を無条件で被告に徴収されることになっていたのです。
このように、変更前条項によると、消費者は、一旦契約をしてしまうと、8日目以後に中途解約をする場合に30%もの違約金の支払いを余儀なくされることとなり、解約をしたくとも解約ができない、使用日まで長期間があるにもかかわらず、あるいは、使用をする必要が全くなくなってしまった場合でも無用の契約に拘束されてしまう、という結果になり、消費者の利益を害する内容の条項であることは明らかでした。
そこで、KC’sとしては、中途解約が衣装の使用日から遡って少なくとも3か月を超える時点においてなされた場合には、中途解約によっても被告には何らの損害も発生していないと考え、変更前条項は、中途解約によって何らの損害も発生していないにもかかわらず、消費者から貸衣装代の30%もの高額の違約金を徴収するもので、消費者契約法第9条1号に違反して無効であり、被告による解約前条項の使用を差し止めるべきと判断し、本件差し止め請求訴訟の提起に至りました。
3 本和解は、先ほど説明しましたとおり、
① 被告は、変更前条項を平成27年4月1日以降の締結された契約に使用せず、変更後の条項を使用
する。
② 被告は、①の方策(変更前条項の記載された契約書用紙の廃棄、従業員への周知徹底)を行う。
③ 被告は、平成27年4月1日以降、契約条項の変更をしない、消費者と変更前条項の内容の契約を
締結する、変更前条項の記載された契約書用紙を廃棄しないなど、本件和解において被告が約束
した事項に反した場合には、一定の金員をKC’s に支払う。
などを主たる内容とするものです。
KC’sとしては、提訴時においては、中途解約が使用日から遡って3か月以上前の時点で行われた場合には、解約金を消費者から一切徴収しないという内容へと条項の改訂がなされるべきと考えておりました。
しかし、契約時から中途解約時までの間に衣装合わせ等を行うなど被告から消費者に対する役務提供がなされる場合があるなど、中途解約に伴う事業者側の不利益も一応は観念されうること、消費者契約法第9条1号で規定される、中途解約の事由、時期等の区分に応じて、当該貸衣装契約と同種の契約の解除に伴い被告に生じる平均的な損害の額が幾らとなるのか、その明確な判断基準を明らかにすることも必ずしも容易ではないこと、という事情がありました。
そこで、KC’sとしては、少なくとも現時点においては、裁判所の提案にかかる「変更後条項」の内容による和解を成立させ、被告に変更後条項への改訂を約束させることが、消費者に過大な違約金の負担をさせない、消費者が長期間の契約に拘束されないなど、変更前条項に比べ、相当程度、消費者利益の保護の効果を持つ内容に変わること鑑み、本和解による解決を選択した次第です。
4 本和解により、被告が改訂することを約束した「変更後条項」は、消費者による中途解約の時期を細かく設定し、それらの時期に応じて、解約金の額も変動する(解約日が使用日に近ければ近いほど増額していく)内容となっています。
これは、一般的に見て、中途解約時から使用日までの期間が短くなればなるほど再契約の可能性も下がっていくことに鑑み、解約日から使用日との日数と解約金の算定基準を時期に応じて細かく段階分けつつ、使用日に近い時点における中途解約であるほど、解約金の額が増えていくような設定にしたものです。
以上のような、解約時期を細かく設定して、それぞれの時期における解約金の算出基準を変動させるという内容の和解が成立したことは、本件の被告だけでなく、被告を含めた貸衣装業界全体におけるあるべき解約金徴収のルールの一例を示すものとして、消費者の利益の確保のみならず、未だ不当に高額な違約金を徴収している他の貸衣装業者の解約金徴収ルールへの波及効果が期待でき、非常に大きな意義があるものと考えます。
KC’sとしては、今後も、不当な内容の消費者契約の使用の差し止めや是正による消費者利益の確保・拡大を実現するため、不断の努力を続けて参りたいと考えておりますので、今後ともKC’sの活動へのご理解とご協力をお願いいたします。