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《本件表示の問題点》
本件措置命令において、本件表示※2は「あたかも、本件商品の原材料の大部分がメロンの果汁であるかのように示す表示」と認定されました(同社は本件措置命令を受け入れています※3)。しかし、本件対象商品は実際にはメロン果汁の含有割合は2%程度に過ぎませんでした。
《当団体のお問合せ事項》
1.本件対象商品の出荷個数から返品個数を引いた実質的な販売個数
2.「1.」の内、貴社が一般消費者に直接販売した個数及びその売上高
3.「1.」の内、貴社が把握可能な、該当商品を購入した一般消費者の人数及びその売上高(第三者を通じて売却した場合であっても、貴社が把握可能な場合を含む。)
4.本件対象商品について、消費者に商品代金を返金する意思の有無
5.「4.」について返金意思がある場合
(1) 返金条件
①対象者(上記「2.」に限定するか等)
②本件措置命令記載の貴社の表示・広告(以下「本件表示」という。)内容によって誤認したことを条件とするか
③「②」について条件とする場合、返金対象となる誤認の内容
④代金支払に関する対象消費者の立証手段の要否及び内容
⑤対象者が請求可能な期間
⑥返金の範囲(全額返金若しくは部分返金の場合はその割合)及び返金手段
⑦その他関連事項等
(2)「(1)」について、公表の有無、公表する場合の内容及び公表手段
(3)「(1)について、「3.」に該当する一般消費者に対し、個別通知の実施の予定の有無及び内容
6.「4.」について返金意思のない場合、その理由
7.景品表示法10条所定の返金措置の実施の予定の有無
8.本件表示により本件対象商品の内容を誤認した消費者の想定数に対し、貴社の実施する返金が相対的に少額にとどまった場合(対象者が商品購入の事実を証明できない場合等を含む。)、貴社は違法な表示・広告により不当な利益を得たとの評価もあり得るところです。これらの利益について保持しないための措置(例えば、貴社商品購入者(本件商品の購入者に限らない。)への還元や、第三者への寄付等を行う。)の予定の有無について。
《同社からの回答》
1. 451万7076本
2.及び3. 当社から直接に一般消費者のお客様に対して本件商品を販売した実績はございません。
4.~7. 当社としましては、消費者庁からの指摘を踏まえ、本件商品のパッケージについて、複数果実を使用したミックスジュースであることがより明確に伝わるデザインに変更しつつメロン果汁の使用量を表示するなどの変更を速やかに行い、また、消費者庁長官の承認を受けた方法により本件商品のパッケージの表示が景品表示法に違反するものであったことを一般消費者のお客様に周知徹底することによる誤認排除措置並びに再発防止策の実施と当社役員及び従業員への周知徹底を行ってまいりました。
このように当社は今回の措置命令を真摯に受け止め、消費者庁のご指導のもと、しかるべき対応を実施し、また今後も実施して参る所存でありますため、商品代金の返金及び景品表示法10条による返金措置の実施の予定はいずれもございません。
8. 当社としましては本件を真摯に受け止め、表示に対するチェック体制を一層強化することで再発防止を徹底すると共に、グループ創業以来の理念である「お客様本位」「品質本位」に基づき、お客様に満足いただける安全・安心な商品・サービスを、適正な表示を持ってお客様に提供していくことが、お客様皆様への企業としての社会的責任と考えており、その使命を果たして参る所存です。
《当団体の見解》
1 誤認して購入した消費者に何らかの被害回復が必要
(1) 消費者の有する権利
本件表示により、本件対象商品の原材料の大部分がメロン果汁であると誤認して購入した消費者は、重要事項の不実告知(消費者契約法4条1項1号)として購入契約を取り消しうると考えます。また、少なくとも果汁飲料の原材料という重要事項について消費者を誤認させる表示により販売した以上、消費者に生じた損害について賠償する義務を負います。
以上のとおり、本件対象商品を誤認して購入した消費者に対しては何らかの被害回復が必要と考えます。
(2) 同社の回答
前記のとおり、同社は当団体に対する回答において対象消費者への返金を否定したほか、後述する返金等に代わる被害回復措置についても何ら約束していません。
(3) 課徴金について
消費者庁は2023年1月18日、同社に対し1915万円の課徴金の納付を命じました※4。しかし、課徴金は国庫に帰属し、対象消費者の被害回復には充てられません。また、課徴金は対象となる売上高の3%を目安に課されています。単純計算で、違法な表示等による販売促進効果が3%を上回れば、同社には違法な表示等により生じた利得が残ることになります。
2 被害回復の方法について
(1) 本件表示により生じた被害については、形式的には当団体の権限、すなわち、消費者裁判特例法による被害回復訴訟※5の対象となります。しかし、商品小売価格が1個あたり数百円の商品被害について、裁判手続を利用するとどうしても費用倒れになってしまうため、本件に関し同社を提訴することは事実上困難です。
(2) そのため、当団体は、比較的少額の被害については、対象企業に対し自主的な返金を促す活動を行ってきました。例えば、2017年に消費者庁が優良誤認として措置命令をした「葛の花イソフラボン」配合食品に関しては、当団体の働きかけもあり、把握しているだけで対象消費者1万6566名に対し自主的返金が実現しました※6。
(3) また、対象消費者の特定が困難な場合、諸外国では代替的な被害回復方法が取られる場合もあります。例えば、問題のあった商品・役務と同種の商品・役務の利用者に対し、一定期間値下げ等を行う例があります。本件では、対象商品を購入した消費者を特定することに困難が予想されるため、代替的な手段での被害回復についても検討されるべきでしょう。
3 期待される同社の対応について
以上のとおり、裁判手続による被害回復が事実上困難なとりわけ少額の被害事例においては、対象企業の消費者に対する姿勢が問われます。同社は、日本有数の企業グループに属する代表的な飲料メーカーであり、親会社であるキリンホールディングス株式会社は、本件措置命令前の令和4年7月末時点までは消費者庁が推進する「消費者志向自主宣言」事業者でした※7。
同社には、本件に対する対応を再考いただき、本件において可能な被害回復や、違法な活動により生じた利得を残さないための施策を実現することを要望します。
4 法制度について
現在消費者庁では景品表示法の改正が検討されています。違法な表示の是正と同時に、今まで以上に、違法な表示により被害を受けた消費者の被害回復に資する制度の整備が求められるところです。
当団体は特定適格消費者団体として、今後とも集団的な消費者被害の回復に寄与する所存です。
《経過》
2022年11月30日 当団体から「お問合せ」を送付。
2023年1月6日 同社から回答を受領。
※1 https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220906_1.pdf
※2 具体的表示内容は https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220906_1.pdf#page=4
※3 https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0906_02.html
※4 https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms207_230118_01.pdf
※5 制度の詳細は以下を参照下さい。 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/collective_litigation_system/about_system/public_relations/
※6 http://www.kc-s.or.jp/detail.php?n_id=10000986
※7 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/consumer_oriented_management/businesses/assets/consumer_partner_cms204_220831_0101.pdf